訪問診療クリニックを開設する魅力
訪問診療はとても大変な仕事だと思います。
大学病院や外来では専門の科を掲げて専門的な医療を提供することを求められますが、訪問診療では、自分の専門科以外にも、より広範な医療の提供が求められます。
例えば、消化器内科の先生が、経管栄養の管理や胃ろう交換、排便コントロール、肝性脳症に対するアミノレバン点滴など消化器系の医療処置の他に、
・認知症
・パーキンソン病等の脳神経難病
・睡眠薬の調整
・トリガーポイント注射関節腔内注射、骨粗しょう症治療薬の皮下注射などの整形外科処置
・褥瘡に対するデブリ等の外科処置
・腎瘻交換
・尿道カテーテルの留置や交換
・オピオイドの調整やほぼカウンセリングに近いようなある程度の時間をとったムンテラといったターミナルケア
・腹膜透析の管理
・輸血処置
腹水穿刺や胸水穿刺
レントゲン撮影
などの医療行為が求められます。
もちろん、これらの行為を専門外だからとやらない訪問診療の先生もおりますが、地域医療への貢献や増患を考えたときには、ひとつでも多くの医療処置が行えることは非常に大きな強みになります。
さらに、訪問診療に特化したクリニックは、24時間365日の往診体制が基本です。
いつ何時でも患者様からの連絡が舞い込んでくる可能性があり、病状に応じて緊急往診をこなさなければなりません。
それに加えて、様々な事業所との連携についても少なくとも最初のうちは院長先生がある程度表に立ってこなしていくことが求められます。
生半可な覚悟では務まらない仕事だなとつくづく思います。
ただ、訪問診療には、それを差し引いても余りある魅力があると考えます。
それは、先生の医師としての志を実現するやりがいのある仕事だということ、そしてビジネスとしてのリスクが低い割に成功が比較的容易でありその見返りも大きいということです。
【やりがいのある仕事としての訪問診療】
医師としての志というのは、例えば
・超高齢社会を迎え、住み慣れた地域での生活に対する需要が高まる中、地域包括ケアにおける医療の中核として、地域医療に貢献すること。
・病院や市役所、地域包括支援センター、ケアマネ事業所、介護サービス事業所などの地域のネットワークと連携して、キュア=治療としての医療ではなく、地域生活全般をサポートするケアとしての医療を提供すること
・人生の最終段階における医療やケアに対する関心が高まる中、家で最期まで過ごしたいというニーズに応えていくこと
などです。
訪問診療は、今後も進んでいく高齢化に伴って、入院に対する診療報酬の縮小や市井で高まる在宅療養のニーズに対応し、地域社会に貢献できるお仕事だと思います。
利用者の方が最期まで安心安全に在宅療養をはじめ地域生活を継続するためには、質の高い訪問診療が求められるゆえ、訪問診療クリニックは、とても大変な責任と業務量を背負っていくことになりますが、時代のニーズに応えて、いままでのキュア重視の医療を作り変えていくという大きなやりがいが伴う仕事だと感じます。
【ビジネスとしての訪問診療】
訪問診療の魅力は、先ほどあげた志を追求すればするほど、クリニックが地域社会に親しまれ、その結果が増患につながり、ビジネスとしても大きな成功を収められるというところにあると考えます。
そもそも訪問診療はビジネスとしてとても魅力的です。理由は以下の通りです。
●初期投資が少なくて済む
●診療報酬が外来と比べても極めて高く利益率も高い
●高い定期収入が見込める
●しかも保険診療
ひとつずつ見ていきます。
初期投資が少なくて済む
訪問診療は、文字通り、利用者の方の自宅に訪問して診療をする医療スタイルです。
もちろん、最低限の事務所としての設備は必要になりますが、外来クリニックのように、お客様に来てもらうためにデザインや設備に神経を使い工夫を凝らす必要はありません。
あえておおざっぱに言ってしまえば、とりあえずの事務所があれば、半径16q県内を訪問して医療を提供できるのです。
診療報酬が外来と比べても極めて高い
私は、新しく採用された医療事務員が初めてレセプト業務を行って驚いている様子を何度も見ました。
曰く、「外来は数十点単位の診療報酬を細かく積み上げていく作業だけれど、訪問診療は診療報酬のケタが違います」ということでした。
諸々の要件はありますが、おおざっぱに計算すると、訪問診療の客単価は、
ひとり8万円/月です。 ※月2回訪問診療行った場合
ターミナルケアに力を入れているクリニックであれば、もっと客単価は上がります。
いままでの経験上、必要経費(医療物品費や家賃、人件費など)は半分ほどを見積もっておけばよいので、利益を4万円と考えると、患者様を20人獲得すれば、月80万円の利益となり、およそ年収1000万円になります。
医師であれば、年収1000万が大学病院の勤務医でも恵まれた金額であるとすぐにわかるのではないでしょうか。
ちなみに、私が立ち上げの時から務めていたクリニックでは、月の新規患者が平均40人、患者数が400人を超えていました。
単純に計算すると、月1600万円の利益をあげていたということになります。※実際はそれ以上でしたが。
それだけの収益があるので、訪問診療クリニックの常勤医の給与は高額です。
平均で1600-1800万円/年。院長クラスになると雇用でも2000万円を超えてきます。
私の勤めていたクリニックでも税理士が個別につくお雇いの院長先生がおりました。
高い定期収入が見込める
上記で述べた話と重なりますが、訪問診療というビジネスの魅力のひとつは、定期収入が見込めるということです。
しかも前述したように、月8万円のとても高額な定期収入になります。
保険診療
訪問診療は保険診療です。
つまり、上記で示した8万円のうち、患者様の負担は、医療保険1割負担であれば8000円です。
様々な医療処置が積み重なって、高額な医療費になったとしても、高額療養費制度で月の限度額が決まっておりますので、例えば、後期高齢者1割負担の方だと、
月の上限が18000円。非課税世帯ですとこれが8000円まで下がります。
さらに、生活保護を受給されている患者様であれば、医療費が全額公費負担ですので、患者様負担なしに、クリニックには先ほどの金額が収入として入ってくるのです。
もちろん、外来と比較すると高額な医療費になりますので、外来診療との価格競争はありますが、訪問診療クリニック間での価格競争はほぼ無きに等しいということになります。
つまり、繰り返しになりますが、どれだけ地域に親しまれ、質の高い訪問診療を提供できるかによって、患者数が変わってくる、収益が変わってくるということになります。
私は、これからの時代に必要とされ、とても大変な仕事と大きな責任を担い、地域医療のために頑張る先生が、これだけの利益をあげるシステムで成果をあげていくのは当然のことだと考えます。
そして私も、志の高い先生がビジネスとしても成功していくサポートをさせていただくことで、これからの日本の地域医療に少しでも貢献できたらなと思っております
ただ、残念ながら、志が高く、人当たりもよいのに、いまひとつ地域に浸透していかないクリニックがあることも事実です。
私は、訪問診療クリニックの相談員や営業として、またケアマネジャーとして勤務してきたゆえに、地域のニーズをたくさん吸い上げてきました。
そのようにして集めたニーズから、なぜ、私の勤めていたクリニックが地域の方から選ばれて新規患者数や総患者数を急増させ、他のクリニックではいまいち奮わないのかを分析することができました。
私は行政書士として、クリニックの開業サポートをするだけでなく、志高く日本の地域社会への貢献に燃えた先生がビジネスとしてもしっかり成功するような運営のお手伝いもできればなと思っております。
訪問診療の開業を本気で考えている先生方や開業だけでなく質の良い医療とビジネスとしての成功を追究する先生方が少しでも医療や経営に専念できるように誠心誠意サポートさせていただければと思います。